「なにやってるんだ、やめろ!」
槙原くんの声が聞こえる。
彼が、奈々ちゃんの肩をつかみ、あたしから引き離そうとする。
すると奈々ちゃんは、片手で槙原くんを突き飛ばした。
「わ……っ!」
吹っ飛ばされた槙原くんは、校舎の壁に背中を打ち付ける。
「ぅえっ、げほ……っ」
槙原くんの名前を呼びたかったのだけど、一瞬解放された喉が一気に空気を吸い込んでしまって、むせた。
涙がにじみ、視界が歪む。
だけど、このままじゃあたしも槙原くんも危ない。
そして、憑依されている奈々ちゃんも、どうなっちゃうかわからない。
「奈々ちゃんの体から、出てって!」
あたしは必死で中のものに呼びかける。
すると、無我夢中で彼女の体を押しのけようとしていた両手から、オーロラ色の気が放出された。
それは奈々ちゃんの体内に吸い込まれていく。
「ぐうううっ、うわああああっ」
「奈々ちゃんっ!」
奈々ちゃんの体が、ぼこりぼこりと内側から歪む。
どうしよう、彼女を苦しめたいわけじゃないのに……!



