奈々ちゃんの体が、電流に撃たれたようにびくんと跳ねる。
「奈々ちゃん!」
名前を呼んだ次の瞬間。
彼女の首だけが、ぐるりとこちらを向いた。
その目は、まるで血に染まったように赤くて……。
「どうしたんだろう?」
「憑依……」
「なんだって?」
槙原くんがそばにいるにも関わらず、あたしは奈々ちゃんに憑いた悪いものと、対峙することになってしまった。
聞きなれない単語を聞いた槙原くんが、目をぱちくりさせてる。
「お願い、逃げて」
「え?何言ってるの?」
早く、と言おうとした瞬間、奈々ちゃんの細い足が地を蹴る。
声にならない叫び声をあげた彼女は、あたしの首をつかみ、そのまま地面に押し倒した。
「く、う……っ!」
首にかけられた指に、強い力がこめられる。
浄化なんてもってのほか、逃げる余裕すらない。
奈々ちゃんの赤い目があたしをにらむ。
グロスが塗られた唇の間に、鋭い牙が見えた気がした。



