後門は本当に小さくて、その付近にはほとんど人がいなかった。
部活が終れば、また人が増えるんだろうけど……。
もうすぐ門をくぐろうと言うときに、奈々ちゃんのスマホが鳴った。
「もしもし……えっ、遅れる?
なにやってんのよー、こっちの友達待たせるつもり?」
電話の相手は、彼氏みたい。
いいなあ、彼カノの会話……。
って、あんまり聞き耳立てるのもよくないよね。
「あのねえ、こっちはムリにつきあってもらってんだよ?
どういう状況かちゃんと説明してくれる?」
おお……?奈々ちゃんのこめかみに、青筋が……。
不穏な空気が垂れ込みはじめ、奈々ちゃんはこちらに口パクで「ちょっとごめん」と言って、後門の中へ戻る。
そして、電話であれやこれやと言いあっていた。
どうしたのかな?
あたしはひそかにため息をついて、そっと裏庭の木々に視線を送る。
四郎くんが言っていたように、あたしが集中さえすれば、妖怪も精霊もまだ見える。
……はずなんだけど。
「あれ……」
今まで、木々の間をちょろちょろしていた小さいおっさんや木の精霊が、一体も見えなかった。



