好きな人……。
なぜかぱっと思い浮かんだのは……。
黒い髪に白い肌、青い目で意地悪そうに笑う、四郎くんだった。
なんでなんで?違う、違うからっ!
インパクトが強い見た目だからって、いきなり人の脳裏に浮かばないでくれるかな!
あたしが好きなのは……好きっていうか、憧れてるのは、真面目で清潔な槙原くんであって。
あんなわけのわかんないキリシタンじゃないんだから!
「い、いないっ」
「ええ?その反応はいるでしょー」
「いないもん!」
奈々ちゃんは笑いながら、正門とは逆の方向に歩いていく。
どうやら彼氏との待ち合わせは、目立たない後門の方にしたみたい。
自転車置き場を抜けると、近くにある武道場に女の子が群がっているのが見えた。
「おお?あれは噂の『風牙くんに好かれ隊?』」
「なにそれ?」
「先輩のファンクラブでしょ」
奈々ちゃんが面白そうに、女の子の群れに近づく。
あたしもこわごわ近づくと、彼女たちの頭の間から、剣道部の練習風景が見えた。



