駅東口のカフェ。指定された待ち合わせ場所はそこだった。あたしも何度か来たことがある。
あと1ヶ月で今年も終わるという季節。そろそろ雪もちらつく頃だろう。急にドカっと降ったりしないと良いな。ちょっと前からそうだけど、あちこちきらびやかなイルミネーションで飾られている。状況が違えば、それを見て楽しむ気持ちもあったのかもしれない。いまはただ、あたしの心はきらびやかじゃない。見ても暗い気持ちにしかならない。
待ち合わせ場所に行く間、夕方のラッシュだから人も多い。すれ違う人達がみんな幸せそうに見えて仕方がない。荒んでるね、本当に。身から出た錆だろうが。
カフェの前まで来て、深呼吸する。それから自動ドアを通った。店内も人が多い。ここは全館終日禁煙のところ。妊婦さんだからそれで良かったと思う。
店内をよく見渡す。先に来ているだろうか。着きましたともなんとも連絡は無いけれど……。
「あ」
奥の席で女性が立ち上がって手を振っている。笑顔の美帆ちゃんだ。先に来ていたらしい。あたしは駆け寄ってコートを脱いだ。
「ごめん、待ちました?」
「ううん。買い物もあったから、このへんに居たの。さっきここ入ったばかり」
テーブルにあったカップは空だった。さっき入ったばかりというのは、たぶん嘘だ。
「ごめん」
謝ってばかりだ。なんだかもう、それしか出てこない。
「飲み物、買っておいでよ」
座りながら美帆ちゃんがそう言った。何も飲みたくない気分だけど……。
「美帆ちゃん、何が良い?」
空のカップを指さして、あたしは聞いた。彼女はすっと髪の毛を直す。
「……あたし、水でいい」
見ると、笑顔を消した顔でそう言われた。無表情と言おうか。目を合わせるのが怖い。あたしは急いでカウンターへ向かい、幸い人が並んでいなかったので、適当に頼んで席に戻ってきた。美帆ちゃんの水を忘れて、もう一度取りに行く。セルフの水を注ぎ、それを持ってまた戻った。足がもつれる。
「忙しいところ、呼んじゃって」
「ううん……」
「……」



