「奏真、忘れ物無い?! そろそろ行かないと……」
「現地調達で良いよ。家に何か忘れてたら、あとで送って」
「もー!」
甘えてんじゃない。少なくとも1年、自分で色々やらないといけないんだからね。今日は小言は言わないことにするけれども!
「ほら早く」
2歩程前を歩くあたしは、マイペースな奏真を手招きで呼んだ。
「焦らせんなって。なんだよ、感動の見送りとか無いわけ?」
「なに言ってんの」
スーツケースをゴロゴロ引きずって、人混みをかき分ける。なんであたしが先に歩いてるんだよ。ああ、下着とかあとで送るけど、当分のは入れたので間に合うのかしら。パスポート持ってる?
「抱きついて、行かないでぇとかって泣かないの?」
「泣かないわ! 永遠の別れでもあるまいし」
国際線のエリアは、日本人じゃない人達もちらほら。あたしは奥までは行けない。
「ここでいいよ。気を付けて帰れよ」
「うん。ファリさんによろしく」
一度、ファリさんと食事でもしたかったな。あたし英語ダメだけど。だってどんな人か分からないのに奏真を預けるなんて……ブツブツ。
まぁ、音楽で通じ合ってるみたいだから良いか。
「帰りに、ここのアイス食べて帰ろうっと。美味しいんだって」
「なんだ、良いな。俺も食べたい。食べてから行く」
「いいから早く行きなさい!」
ただでさえギリギリなのに、早く行けって。もう……子供か。
あたしにどやされて、スーツケースを引き、歩き出した奏真が通路で立ち止まる。振り返ってあたしに手を振った。あたしも振り返す。
「結婚しような!」
大きな声で。まわりの人達がびっくりしてる。恥ずかしいなぁ……。でも、嬉しい。そりゃあ、ねぇ。



