月夜のメティエ


「一緒に来るか?」

 それを聞いて、あたしはふふっと笑ってしまった。そんなこと聞かないでよ。

「それは無理だって分かってるよね。旅行に行くわけじゃない。仕事でしょ?」

「……そうだな」

 奏真も笑った。

「今度は、ちゃんと連絡も取れるし、音信不通になるわけじゃないからな」

 あたしの手を持ったまま、ソファにもたれかかる。きゅっという音がした。そして、あたしを片手で抱き寄せる。頭の上に奏真の顎が当たった。


「別れじゃない。帰って来るよ、ここに。朱理のところに」

 声が、脳味噌に響くよ。

「帰ってきて」

「おう」

 優しい手は、あたしを抱いて、髪を撫でる。

「絶対ね」

「うん」

「待ってる」