月夜のメティエ


「2人で暮らして、どうだ」

「どうって何が?」

「んー」

 自分で質問しといて、なんかうわの空そらだよ。まったく。

 マニキュア瓶からブラシを出して、量を調節してるらしい。
 あたしの指を優しく掴むと、右手人差し指、中指の順番で塗ってくれた。男の人にこんなことして貰うの初めてだ。

 湯上がりなことと関係無く、指先が熱い。奏真の指が触れてるから。

「ちょっと……集中。器用なもんだろ」

 話しかけるなってことか。右手小指まで塗って、親指を塗って、終わり。次は左手だ。
 綺麗になった右手の指。そうだね、器用。そんなの知ってるよ。なかなか綺麗に塗ってくれた。

「このまま、ずっと一緒に居られっかな?」

 あたしの左手、人差し指を塗りながら。

「そうだね。少なくともあたしはそう思ってるよ」

 願って、2人は一緒に居る。

「そっか」

 左手集中。あと親指だけ塗れば、終わり。
 テレビは点いてるけど、観ていない。エアコンの音、マニキュアの匂い。奏真の部屋から持ってきた、丸い加湿器。冬はひと巡りして、またやってきた。でももうすぐ暖かくなる。

「ありがと」