月夜のメティエ



 長めのお風呂から戻ってくると、珍しく奏真は起きていた。ビール何本飲んだんだろう?

 あたしはメイクグッズを入れているボックスから、マニキュアを取り出す。あまりたくさんは持っていないけど。そして、冷蔵庫へ行ってビールを出して開けた。プシュッと気持ちの良い音。

「俺ももう1本欲しい」

「何本目~?」

「4本目かな」

 350mlだけど、結構飲んでるなぁ。まぁいいか。あたしは1本だけにしよう。
 観てるんだかどうだか分からないテレビ。バラエティ番組。奏真はトロンとした眠そうな目で、渡した新しいビールを開けて飲んだ。

「ああ、うまい」

「おつまみいる?」

「カキピーあったっけ?」

 奏真の隣に座り、マニキュアを塗ろうと、キャップを開けた。

「塗るの?」

「うん。剥げてたから」

 リムーバーは、お風呂に行く前にやっておいた。湯上がりピンク色の爪。引っかかるのが嫌いだから長くはしない。
 ふうん、そう鼻から息を吐いた奏真。テレビはニュース番組に変わっていた。指先越しに、テレビ。すると突然、肩を抱かれる。酒臭いなぁ。

「俺が塗ってやるよ」

「え? やだよー酔っぱらい」

 いきなりそんなことを言い出す奏真にびっくりしてしまう。酔ってるでしょう。塗れるわけがないでしょうが。 

「器用なんだって。ピアニスト舐めんな」

「舐めてないけど」

 あたしからマニキュアを取り上げると、手を掴んでくる。ああ、もう。なんだこの酔っぱらい。

「いいから、手ぇ貸しなさすぁい」

「舌回ってないし!」

 あぐらをかいて、あたしの方を向く奏真。あたしは観念して手を差し出す。
 ソファの上、向かい合ってる。なんだか変なの。