月夜のメティエ


 ああ、ネイル剥げてる。
 キーボードを打つ指先。今晩、綺麗にしてあげようか。ヤスリで削って、何色のマニキュアにしようか。


 季節がひとまわりして、寒い冬を越している。

 もうすぐ、暖かくなるね。桜が咲くよ。お花見に行きたい。

 あたしも彼も休みで家に居て、ゆっくりビールを飲みながら、そんな話をするんだ。こたつで過ごす夜が好き。ちょっと散らかってるけど。


 仕事は残業でちょっと遅くなっちゃったけど、帰ると奏真はDVDを観ながら待ってた。お昼ご飯が遅かったらしく、ちょうど良いらしい。こんな時は、冷蔵庫に買ってあったお総菜が大活躍。奏真自身は、あまり料理はしない。こういう時は、先に食べててくれても良いんだけどね。

 支度が終わると、21時ちょっと前だった。

「ミミガーのこれ、すごい美味い」

 ジャージでリラックスしてる奏真が、1品だけずっと食べてる。ミミガーときゅうりのおつまみだ。これはビールに合うんだよね。

 きゅうりを千切りにして、ミミガーを一緒にする。そこへ塩コショウ&ラー油を入れて混ぜる。

「中華料理を食べた時に、これ出たんだよね」

「会社で? 高級中華料理なんだろうなー」

「……友達と飲みに行って、ふらっと立ち寄った店だよ」

 小汚い店だった、とは言わないでおきます。箸で運んだきゅうりを口から半分出したまま、あたしを睨む奏真。

「ふらふら飲み歩きして! お前は!」

「わあごめんなさい!」

 泥酔して帰ってくるからですね……すみません。