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「奏真、今晩夕飯作るけど、何食べたい?」
会社のエレベーター前。
奏真はまだ家に居た。夕方に出勤だものね。
LINEというものがあってだな。相変わらずあたしはやらない。だから電話をかけてる。やってくれって言われてるけど、頑なにやらない。やらないけど……もう始めないとダメな気がしてる。「俺、1年待ってるんだけど」って言われた。
「あったかいの食べたい……俺ちょっと二日酔いだったんだよ」
「ICHIROで?」
昨夜は遅かったもんな。先に寝てたけど。今朝、あたしが出勤する時は寝ていたし。
「そう。ママが誕生日近いから、誕生日キャンペーンだとか言って。なんのキャンペーンだか」
「誕生日なんだ、じゃああたし行かなくちゃ」
「朱理、飲まされるぞ」
どんな店なんだ……。演奏終わってから飲んで帰るというのは「ICHIRO」だけらしい。あとは本当に演奏だけしに行ってる感じらしいし。
奏真の仕事場、あたしは「ICHIRO」しか行ってないから。
「今週の日曜は俺、何も無いから、土曜の夜にでも行くか」
「うん、そうだね」
ピアノバーやカフェへの演奏。そして、こども音楽教室。奏真は毎日忙しい。なんだかちょっとしたファンも居るらしくて、時々花束を貰って来たりしている。お休みは不規則。夕方出かけていくことが多い。あたしは、月曜から金曜の、昼間の仕事。
すれ違いが怖くて、あたしはなるべく奏真が帰ってくるまで起きてる。朝は、奏真が起きてたりするけど。だって、やっぱり一緒に居たいからね。



