月夜のメティエ


 妻子ある恋人だとか、まあそれは想像の域を出ないんだけど、奏真の想像は当たらずとも遠からずだった。沈黙を通してた美帆ちゃんの方が1枚うわてだったということだ。


「お前なぁ、大事なことなんで言わないんだよ。なんか色々ハッキリ言わないのな……」

 大きなため息。

 結婚のこともだし、お腹の子のことも。そして、あたし達の見事な空回り様。

「何もかも話されても困るでしょうよ。だからいいのよ」

「だからってなんで黙ってんだよ~」

 あたしと2人で会った時も、本当はこのことを伝えようと思っていたんだろう。途中で帰ってしまったからな、あたし。

「だってさ、2人にそれぞれ説明するのって体力使うし。会うのに出かけないといけないし、あたし身重だし。これで1回で済むじゃん?」

 うふふ、そう彼女は笑う。

「朱理ちゃん、奏真のこと、好き?」

「……」

 真っ直ぐ見られて、ドキリとした。2、3度まばたきをしてから、あたしは深く頷く。
 そして、隣の奏真を見る。

「奏真、ありがとう」

 美帆ちゃんは、奏真の肩をパンチした。妊婦パンチ。