え……? ……うそ。
「美帆?」
「でも……妊娠して不安だったから、嬉しかったけどね」
笑顔を向ける美帆ちゃん。
結婚はできないと。今、彼女はそう言った。奏真の気持ちは嬉しかったけど、結婚はできないと。
「愛してる人の子だからあたし、産むんだよ。意味、分かるでしょ?」
その子の父親は、奏真じゃない。
奏真は目を見開いている。
「お前……何も言ってなかったじゃないか。その、男と別れたんじゃなかったのか?」
「別れたって言ってないと思うけど……ちょっと距離置こうって話になってた。その矢先だったのよ。妊娠が分かったの」
奏真の勘違い? あまり大きな声では言えない恋人との関係。そして妊娠発覚と、奏真からの誘い。
美帆ちゃんだって戸惑ったに違いない。
「俺が断りに行った時、何も言ってなかったじゃないか」
「一緒になれないって言われて、まぁ一瞬でも奏真と結婚しちゃおうかなって思ったあたしも居たの。向こうと別れてね。でも、最初から思ってた。奏真はあたしを愛していないから」
最初から思ってただなんて……。
「美帆ちゃん、あの」
「お待たせしました」
すごいタイミングで、さっき頼んだビールが運ばれてきた。
「奏真は、朱理ちゃんを好きなんでしょ?」
彼女の発言は、あたしと奏真の動きを止めることに、絶大なる力を発揮した。どういうこと……。
「それにあたしは、お腹の子の母親だから。母親なめんなよ」
にっこり笑う美帆ちゃん。奏真は深いため息のようなものをついて、のけぞった。
「この間、俺が一緒になれないって言った時、何も言わなかったから……」
本当にこの人は……。美帆ちゃんは、奏真にもあたしにも、はっきりしたことを言わなかった。
「なんかさぁ、2人でコソコソしてっから悪いのよ。ちょっとした腹いせよ、腹いせ」
そう言われると何も言えない。一応は結婚の予定はあったわけだから。
「大丈夫よ。何も心配いらないわ。ちょっとね、彼は奥さんと離婚が決まったばかりだから」
……大事なことを、さらっと言ったし。
「あ、あたしが原因じゃないわよ、念のため。出会う前から別居してたんだから」
しれっと結構大変なことを言う。



