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翌朝、奏真は美帆ちゃんのところへ行くと言い、あたしを部屋に残して出かけて行った。合鍵を置いて。
夜、そのまま「ICHIRO」へ仕事に行くと言う。
あたしは今日まで正月休みだから、今日1日……何しよう。家に帰るか、1度。「ICHIRO」に来いよと奏真は言ってくれていたけれど。
美帆にもう一度きちんと話してくる。そう言って奏真は出て行った。あたしも一緒に行くって言ったけど、あとで連絡するからと、静かに言われた。
昼頃まで、テレビを見たりしてだらだらと過ごし、今朝の食事の後片付けをして、テーブルを拭いてみたりしてから、奏真の部屋を出た。雪は降っていない。
「寒いなぁ……」
太陽が出ていて、良い天気だ。昨夜は月が綺麗だったから、明日は晴れだな、そう思ったんだよね。大通りに出て、タクシーを拾う。
晴れていてとても高い空。気持ちが重くても、空は澄み渡っていた。
着信音が聞こえる。誰だろ……体が動かない。
「……!」
自分の部屋に帰ってきて軽く食事をし、その後、ベッドで雑誌を見るうちに、どうやらそのまま眠ってしまったらしい。着信音。枕のそばでスマホが鳴っている。見ると、奏真からの電話だった。
「はい……」
寝起きだから声が出辛い。
「あーもしもし、俺……まだ俺んちに居た?」
体を起こす。中途半端に変な姿勢で寝ていたからだろう。腰が痛い。口によだれも付いていた。1人で良かった。
「ううん……あ、ちゃんと鍵は閉めてきたよ。鍵、ポストの中に入れてきたから。いま自分の部屋……」
「なんだ、鍵は持ってって良かったのに」
奏真はそう言うけど、鍵はどうしたもんかと思ったけど……持ってくるわけにも行かなかったから。窓に目をやる。外は暗くなっていた。
「あのさ、今晩「ICHIRO」に来るだろ?」
「うん。そのつもり」
「話もあるから……さ」
「分かった」



