「………」
(なぜ紋瀬に手を出さない…)
その様子を不審に思った八助は、視線を部屋に巡らせた。
すると目に飛び込んできたのはキラリと光る、周りとは形の異なる鏡。
(…なる程。紋瀬の傍に破魔の鏡があって、近づけぬのだな)
八助はそう確信した。
「紋瀬、絶対にそこを動くなよ」
言われ、紋瀬はこくこくと何度も首を縦に振る。
八助は鬼を誘い出すように、じりっと後ろに下がった。
《逃げるつもりか、いや逃がさんぞ》
「誰が逃げると言った?」
その手が目的の物を掴む。
「それはお前の方だろう」
朱の枠を持つ鏡を、八助は鬼の足元に力を込めて放った。
ガシャンッ!!
大きな割れる音がして、破片が辺りに高く広く飛び散る。
《ぐ・・・わぁぁぁぁっ・・・お、おのれっ》
光る破片がまるで鬼の体に吸い込まれるように突き刺さり、苦しげな咆哮を上げた。
「この鏡は特殊な鏡。刺さった破片は、お前がこの地に足を踏み入れる度に苦痛を与えつづけるだろう。痛みから解放されたくば、ここより去れっ!!」
凛とした声で八助は告げる。
《おぼえていろ…》
捨て台詞を残し、鬼はその場から姿を消した。
血まみれの部屋に八助と紋瀬の二人だけを残して…。
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