誰かが窓を開けた拍子に、冷たい風が教室に入って来る。

あまりの寒さに、掃除をしていたあたしたちはみんな一斉にそっちを見た。



「ほら、早く終わらせちゃおうよ」



どうやらしっかり者の委員長が開けたらしい。



空気の入れ替えのため……、もとい箒を支えにしておしゃべりをしていたあたしたちを動かすため。

次々と窓を開けていく。



掃除をすべきなのはわかってるけど……。

せっかく一日を乗り切ることができたのに、そのあと掃除なんてやる気しないんだもん。



とはいえ仕方がない。

首をすくめ、白いお気に入りのマフラーに顔を埋めながら手を動かす。



「あ。結晶(ゆあ)ー、お迎え。
白石(しらいし)くん来たよー」



白石──それはあたしの彼氏、ユキの苗字だ。



「うっわ、ごめーん。
もうちょっと待ってて!
すぐに終わらせるから!」



慌てて真面目に掃除をしようとしたところで、違う違うという彼の言葉に呼び止められる。



「今日は用事ができたから、一緒に帰れないって言いに来たんだ」



え。



「なにそれ聞いてない。
もっと早く言ってよ」

「だって、黒沢(くろさわ)いつも直接言えって言うだろー?」

「そうだけど……」



今日はさっきみんなに教えて貰ったカフェに付き合って貰おうと思っていたのになぁ。



また箒を支えにずるずると滑っていく。