カフェから出たのは一時半くらいだったかな。
それからなにともなく店を見に、手を繋ぎながらうろうろと歩き回って時間を潰した。
何軒目かの雑貨屋を出るとゆっくりと回りながら白い雪が降ってきていた。
「いつの間に……」
思わずふたりして口をポカンと開けながら雪を目で追う。
落ちてきては風に煽られまた上へ。
何度もそれを繰り返して、そしてユキの肩にそっと落ちた。
ふと重なった目をそらし、鞄から渡すタイミングを逃していたクッキーを取り出した。
「はい、バレンタインのクッキー」
ずっとずっと繋いでいた手が、そっと離される。
繋いでいた時間が長かったせいで、固まっていた手はなんだか少しぎこちなく、やけに冷たい空気を感じていた。
「ごめん、黒沢。ごめん、な……」
髪をかき混ぜるユキの腕時計のカチカチという音が聴こえなくなった。
カウントダウンが、──────終わる。

