305号室の男。【完】

「奈緒、俺を見つけて嬉しくて席立ったのか?」



「……っ。そんなんじゃないです」



「奈緒は素直じゃねぇな。で、隣の可愛い子は誰?」



―ズキンッ―



“可愛い子”って聞いただけで、奈緒の胸は痛くなった。



「あ、この子は会社の後輩で…」



「桜木葵ですぅ♪」



葵の声が高くなった。



「葵ちゃんか。名前も可愛いんだな?」



なんて、大智さんまで嬉しそうにしてるし。



「名前聞いてもいいですかぁ?」



「大智でいいよ」



こんな会話を隣で聞いていて、奈緒の胸は更に傷んだ。