ようこそゲストさん
裏庭のクリスマスツリーを見に来ている人は誰もいなかった。いるのは、先輩と私だけ。先輩は、すげーな、と口を開けたままツリーを見上げていた。幼さの残るその顔もやっぱり好きだ。
しばらく見ていると手が冷えてきた。手袋も持たずに外に出たのだから当たり前である。冷えた手に息を吹きかける。そんなに温まらないが、やらずにはいられない。
「手、寒いの?」
そんな私に気づいた先輩が、顔を寄せて聞いてきた。こくりと頷けば、幼かったその顔は一転、意地悪な笑顔に変わる。
「じゃあ、俺があっためてやろっか」
ぐいっと私の手を引っ張って、先輩が言った。それはつまり…手を繋…
「なーんてな」
私の考えを見透かしたように、先輩はパッと手を離した。重力に従って落ちた私の手には、いつのまにか手袋が握らされている。
「それ、俺からのクリスマスプレゼント」
そう言った先輩の顔は、青い照明の中で、なぜか少し赤く見えた。