305号室の男。【完】

「あのね?隣に住んでる人なんだけど…」



「それまた、ずいぶん身近にいましたねぇ」



「うん…。初めはね?最悪だったの。部屋から女の喘ぎ声が毎日聞こえてきて。朝、昼、夜、関係なくだよ?しかも毎日違う女」



「は?奈緒さん、まさかそこを好きに…」



「なるわけないでしょうが!!」



奈緒は“バンッ”とテーブルを叩いた。



「ですよね…?あー、ビックリしたぁ」



「もう…。それでね、いつか顔見てやろうと思ってたら玄関の前で、その人を見てね。話し掛けられて聞いたら“鍵無くした”って。“トイレかしてほしい”って言うからトイレかしてあげて、そしたら“お腹減った”っていうからゴハン一緒に食べて…」



「ちょっ…ちょっと待って下さい!!展開早すぎませんか!?」



「うん…。自分でもビックリ」



「で、ヤったんですか?」



「なっ!!ヤルわけないでしょ!!」



思わず声が大きくなり、周りの客に見られ奈緒は小さくなった。



「なーんだ、良かったぁ」



一方、葵は何も気にせずビールを飲んでいた。