305号室の男。【完】

「あ、あの…ごめんなさい!!あたし、奈緒さんを泣かすつもりはなかったんです…」



「ち、違うの。ごめんね、急に泣いたりして…」



「やっぱり忘れられませんか…?」



「…まぁね。もう5年も経つのにね…」



「早いですね」



「うん…」



「誰か気になる人は、いないんですか?」



「………っ」



そんな、葵の問いかけに答えられなかった。



「仕事入れる理由は、それですか」



「それは、ちが…」



「もう、いいんじゃないですか?恋愛しても」



「………」



何も言えなかった。