305号室の男。【完】

「そうか?ならいいけど。言いたいことあんなら言えよ?」



「…うん」



やめよ、もう何も考えないようにしよ。



軽く頭を振って、再びバイクに跨った。



「あれ…?」



バイクが走り出すと、そのうちに見覚えのある景色が目に映った。



「大事な…、場所…」



あたしは数秒、息が出来なかった。



バイクを停め、大智さんがあたしのヘルメットを外した。



「来たかっただろ?」



「詠二…」



そこは詠二のお墓がある場所…、だった。



大智さんと付き合ってから何となく詠二のお墓に行きづらくなり、お姉さんと会った時にお仏壇に手を合わせることしかしていなかった。



「俺に遠慮なんか、しなくていいんだぞ?」



そう言ってくれる大智さんは、優しい。



あたしが反対の立場だったら、こんなこと言えたかな…。



きっと、あたしは子供だから嫉妬してしまうのかもしれない…。



大智さんはしないのかな…、嫉妬。



そんな思いで大智さんを見上げた。