「奈緒、こっち来て」



「ちょっ!!」



大智さんは人よりも回復が早いらしく、いつもこうやって油断をした時に、あたしの腕を引っ張り毎度大智さんの胸に飛び込んでしまう。



「なぁ…。キス、しようか?」



耳元で、いつも言う大智さんに。



「し…、しませんっ!!」



胸を押し返すあたし。



いつもなら“そっか、残念”と、おもしろそうに言うくせに今日は。



「詠二のことがあるから…、か?」



大智さんから、笑顔が消えた。



「ち…、がう。詠二は関係ないよ…。ただ…」



首を傾げた大智さんに。



「初めての…、キスは…。病院じゃ嫌、なだけ…」



あたしの想いが伝わってほしいのと、恥ずかしさでいっぱいのあたしは一言、一言区切って伝えた。



「奈緒…、やっぱりお前可愛いな」



グイッと腕を引っ張られた。



「ちょっ!!誰か来るってば!!」



大智さんの胸の中で、暴れるあたし。



「誰も来ねぇって」



「来たらどうするのよ!!」



大智さんの胸の中でもがき、やっとの思いで顔を上げた。