「行かなければいい」

「・・・」

「部活なんて辞めちゃえばいい」

「何言って・・・できるわけないじゃん」

「なぜ? 出来るよそんなこと簡単に。じゃぁ、なぜ辞められないわけ? そこまでしてそこにいる必要があるかな?」

「そんな簡単なものじゃないよ・・・だって」

「ね。そう思ってるだけ。自分でそういう風に考えちゃってるだけで、今は確かにそう思うけど、私みたいになっちゃえばそんなこと思いもしなくなる」

 あざみのある意味では的を射た答えにびっくりした富多子は隣に座っているあざみの目をじっと見た。

 いくつか言っている意味が分からないところがあるが、それを頭の片隅に置いて聞くと、妙に納得させられるところもあった。

「ここにおいで。嫌なことは忘れさせてあげられると思うよ」

 あざみは富多子の手を取った。

 その手はひんやりと冷たく、決して心地のよい手触りとは言えなかった。

「相談に乗ってくれて、どうもありがとうございました」

 その冷たい手の感触に気味悪さを感じた富多子は、失礼の無いように手を振りほどくと、

 咄嗟にベンチを立ち、深々と頭を下げた。