黄色い線の内側までお下がりください


 サークルの集まりは想像以上に楽しいもので、お互いの古い友人、知人に紹介することはもちろん、新しく知り合った人たちとの縁もできた。

 楽しい時間はあっという間に過ぎ去り、忘れたい事実はほんの一時頭から離れていく。


「すごい楽しかったね! また行こうね。てか、行きたい!」

「そうだね。来月もやるって言ってたからまた行ってみよう」

「嬉しいっ! 約束ね。それにしてもさ、けっこうな時間になっちゃったね。早く帰って録画したテレビ番組見よっ」

「それはいいけど富多子ちゃん明日1限から講義入ってるよね? 夜遅くなると起きれないよ。大丈夫なの?」

「大丈夫、だって起こしてくれるでしょ?」

「それはもちろんだけど...」


 自分のことを何かと気にかけてくれる彼氏をいとおしいと思うようになったのは最近のことだった。

 決して裏切ることをしない、いつでも側にいてくれる、わがままも受け入れてくれるし、そして愛してくれている。

 手放したくないと思うようになっていた。

 手放してはいけないと思うようになっていた。

 こんなにも自分に気を使ってくれて、最優先に考えてくれる優しい人を失ってはならない。

 どんなことがあってもきっと彼は側にいてくれると富多子は確信し、繋いだ手をぎゅっと握りしめ、微笑んだ。

 もちろん同じように手を握り返して微笑み返してくれる。

 今が一番幸せだ。

 そう思っていた。