恐怖短編集

真夜中、一階から物音がして目が覚めた。


静まり返った部屋の中で、携帯の画面を確認する。


ちょうど二時になったところだ。



少しあくびをして、下の階の音に耳をすませる。


机を叩くような音に、誰かのすすり泣きの声がまじる。


「お母さん?」


私はつぶやき、ベッドを降りて床に耳をへばりつけた。


聞き取れないほどの小声で父親と母親が何か話していて、時折二人の鼻をすする音が聞こえる。


テレビの音なども聞こえてこない。


次の瞬間、耳を疑う言葉が聞こえてきた。


「死のうか」


父親の声だ。


私は驚いて床から耳を離す。


体中に電流を流されたように、ピリピリと鼓膜が痛い。


今、なんて?


おそるおそる、もう一度床に耳をつけた。