「何がついてないって?」
「…耳がいいっすね」
ニヤリと笑いながら聞いてきた渡辺に、浅井が苦笑いを返した。
「そういえばさっき塚越と何か話してたろ」
椅子に座りながら言った渡辺に、浅井がタバコを取り出しながら返事をする。
「あぁ…なんか教習で分からないところがあるとかなんとかって…」
曖昧に誤魔化す浅井に、渡辺が厳しい視線を送る。
「…それ本当か?
オレ3時間目塚越だったけど…
おまえの事聞かれたよ。
歳とか仲いいかとか…」
「…マジっすか?」
「あぁ。
だから、そうゆう事聞いたりしてると浅井が立場を悪くするから聞きたい事があるなら本人に聞けって言っておいた。
変な噂でもたったら嫌だしな」
渡辺の口から、タバコの煙がゆっくりと吐かれた。
それでさっき急に聞いてきたのか…
『彼女いますか?』
教習中いきなり聞かれた質問を思い出して、浅井が煙ともため息とも取れる息を吐き出す。
.



