「あんなに仲良かったのに…」
ぽつりともらしたみのりに、悠太が外を見たまま言葉を付け加えた。
「別に仲が悪くなって出て行ったんじゃない。
…うち、車とか自転車の修理やってたけど、結構借金とかあったから…
…多分、返せそうになくなって父さんが1人で背負ったんだ。
母さんにもオレにも相談しないで父さんはそれを1人で決めて出て行ったんだ…
朝起きたら…離婚届があって…母さんが泣いてた。
それで…
父さんがいないと店続けられないから母さんの実家に引っ越したんだ」
少し賑やかになってきた店内に、また客の来店を知らせるチャイムが鳴る。
南商の制服を来た4人組の女子高生が騒ぎながら禁煙席に歩いていく。
南商からほど近いこのファミレスはみのりも高校の時よく利用していた。
悠太が忘れられないと友達に相談した事もあった。
急に心変わりしたと思い込んで…
そんな悠太を想い、泣いた事もあった。
そんな場所で、あんなに好きだった悠太と向かい合うなんて…
考えた事もなかった。
しかも、こんな話を聞かされるなんて…
店員に運ばれてきた紅茶が、2人の間に湯気を立てる。
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