「今日は仕事で来たんですか?」
「うん…だからもう帰らないと…」
別に苦手な訳じゃない。
すごくいい子だと思った。
だけど…
浅井との事が、どうしても頭をよぎる。
一言だけ掛けて帰ろうかと、塚越に視線を移した時、
みのりの目に、落ち込んだ表情をした塚越の顔が映った。
「…塚越さん?どうかした?」
みのりの声に塚越がハッとして顔を上げて…
そして悲しそうな表情を見せた。
「あの…教習所の浅井さん…
彼女がいるみたいなんです」
塚越の言葉に、思わず浮かべてしまった困惑の表情を俯いて隠す。
「そうなんだ…」
他に何て言えばいいのか分からなくて、みのりが頷きながらそう言うと、塚越も視線を落とした。
「何日か前、教習で浅井さんと一瞬になったんです。
そしたら…首元にキスマークがあって…」
塚越の言葉に、みのりの体が小さくすくむ。
それは…
みのりがつけたものだったから…
『みのりが安心するだけしるしつけろよ』
浅井につけた、自分のしるし…
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