「……」
何も言わずにケータイを閉じると、みのりが浅井に声をかけた。
「沙紀さん、大丈夫そう?」
「あぁ…」
みのりの入れたコーヒーを持って、浅井もみのりのいるテーブルに移る。
4人掛けのテーブル。
いつもなら向かいに座るのに、その日浅井が椅子を引いたのはみのりの隣。
みのりが不思議そうに浅井を見つめた。
「みのりさ…
オレが沙紀に電話掛けるの嫌だった?」
浅井の言葉に、みのりが一瞬だけ表情を変えた。
でもすぐに笑顔を作って首を振る。
「嫌じゃないよ?
なんで急に…」
「本当に?
…オレは本当のみのりの気持ちが知りたい」
浅井が真剣に見つめる先で、みのりの瞳が揺れたのが分かった。
揺れた瞳がうっすらと涙を浮かべて…
伏せられる。
「本当は…ちょっとだけ嫌…」
「じゃあ掛ける前に言えよ。
オレみのりが嫌なら掛けなかっ…」
「違うっ…違うの…」
浅井を、みのりが首を振りながら止める。
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