そして、午後の教習開始を知らせるベルに自分の車に向かった時、
20番車の横に立つ塚越の姿が目に映った。
南商の制服に身を包む塚越はみのりよりも5センチくらい背が高く髪は肩につかない程度。
みのりよりも短い髪は黒く日に透けていた。
『好きにならない?』
みのりの言葉が頭をよぎって、浅井が緩ませた口元から小さく息を吐く。
「なるわけないだろ…」
こんなにみのりの事しか考えてないのに…
どうやって好きになれって言うんだよ。
周りにバレない程度に口元に笑みを浮かべて20番車の助手席側に立った。
「……」
浅井が教習手帳を見ていると、じっと見つめてくる塚越の視線に気付いて顔を上げた。
「…どうかしたか?」
「あっ…いえ…」
慌てて視線を逸らした塚越を不思議に思いながら、浅井が車に乗り込んだ。
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