浅井の事を疑う気持ちなんかなかった。


自分を大切にしてくれている事もわかっていた。


簡単に自分以外に気持ちを向けない事も…





なのに…




「バカはあたしだよね…」


あんな大した事ない話が気になって浅井さんの部屋なんか来ちゃって…


きっと、塚越さんだって本気じゃないもん。


ただちょっと話題に出しただけで、深い意味なんかないんだよ。


なのに気にしてるあたしは…

本当に子供だ。




『ガキ(笑)』


浅井の声が聞こえた気がして、みのりが苦笑いを浮かべる。



ケータイの着歴の『公衆電話』の文字がうれしかった。


わざわざ掛けてきてくれた事がうれしかった。




みのりが躊躇しながら、

もう1件の今日の着歴に画面を切り替える。




11時50分 塚越さん




その画面を眺めながら…



もう浅井が塚越の担当にならない事を願った。




「本当にバカだ…」



ほんの少しの可能性で不安になる小さな自分にため息をついてから、浅井の部屋を後にした。




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