4人部屋の病室は、廊下側のベッドが2つ空いていた。
この間までいた人はもう退院したのかと考えを巡らせていると、中から浅井の声が聞こえた。
「いえ…
小田切さんに言われて、僕も思う事があったので…」
いつもは『オレ』という一人称は『僕』に変えられていて、少し偉そうな話し方も今は紳士的な態度に変えられていた。
いつもとは違う浅井の振る舞いが新鮮で、少しけ胸をくすぐる。
だけど不安の方が大きくて…
「確かに…小田切さんの言うとおりで、僕よりもみのりに相応しい男はたくさんいると思います。
…情けないですが悠太くんの方が僕より相応しいっていう事も否定できません」
浅井の口からポツポツと語られる言葉に、みのりが顔を強ばらせる。
続く言葉に嫌な予感が走って…
緊張からか唇が乾く。
「悠太くんは優しくてしっかりしてるから、一緒にいればきっとみのりも以前みたいに好きになれるんじゃないか…とも思います。
それが…一番みのりにとってはいいのかもしれないって…」
窓から入り込んでくる風が、みのりの瞳を乾かして涙を浮かばせる。
浅井の出そうとしている答えを聞きたくなくてこの場を離れたいのに…
足が、動かない。
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