「ばいばーいっ」
母親や父親を紹介された後、青いクマを見せられてから解放されたみのりが、元気のいい笑顔に送り出された。
その大きな声はやっぱり病院には似合わなくて…
みのりが苦笑いを浮かべながら、手を振った。
そして、男の子が病室に入ったのを見届けてから前を向いた瞬間…
「あれ?みのりちゃん?」
ペットボトルを片手に持った悟と鉢合わせになった。
すっかり気を抜いていたみのりの頭が、突然の悟の姿に真っ白になった。
別に悪い事をしている訳でもないのに、まずいところを見られてしまった感覚が襲う。
悟がいるって事は、浅井もいるという事で…
ロビーで待ってるという約束を破っている手前、少しだけ気まずくて…
だけど、悟の後ろに浅井の姿はなかった。
「…浅井さんは?」
みのりが戸惑いながら聞くと、悟は不思議そうに首を傾げた。
「遼にぃ?姉ちゃんのとこには来てないけど…来てんの?」
「うん…5分くらい前にエレベーターに乗ったんだけど…悟くんに話があるって…」
どうも噛み合わない話に、みのりが表情を歪めた。
.



