きっと仕事じゃないのに、それを問いただすなんて出来なくて…
何かを隠しているのに、それを聞く事も出来ない。
なんであたしはこうなんだろ…
こんなんじゃダメに決まってるのに。
不安ならそれを伝えなきゃダメなのに。
聞きたくないからって耳を塞いじゃダメなのに。
縮こまって不安がってるだけじゃ何も変わらない。
変わらないのに…
『明日迎えに行くから』
ふいに浅井の言葉が浮かんで、みのりが表情を歪ませる。
「会うのが憂鬱なんて…初めてかも」
憂鬱…正確には、怖いのかもしれない。
会って、もしも浅井さんの態度が今までと違ったらって考えると…
怖くて…
どうしたらいいのか分からなくなる。
左手の薬指に光る指輪に、みのりが視線を落とす。
シルバーの指輪は、頂上でクロスする形になっていて、その間にはみのりの誕生石のダイヤが埋め込まれていた。
控え目なデザインは、仕事の邪魔にならないようにと浅井が選んでくれたもの。
過去の浅井の優しさを思い出すと、胸が痛い。
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