『ごめん。
明日の午後ちょっと用事があるから、会うの夕方からでもいい?』
22時40分。
今日も遅い時間の浅井からの電話がそう告げた。
この数日間、みのりから連絡を取ることは出来なかった。
小さく築き上げた自信は、もうすっかり消えて、付き合う前の心境に戻っていた。
浅井の迷惑にならないように自分からは連絡を取らない。
ただ黙って浅井からの連絡を待って…なんでもない振りをする。
そんな自分が情けなくて仕方ないのに…浅井に真実を確かめる勇気も、責め立てる度胸もなかった。
「うん…仕事?」
それでも最小限の疑問を投げかけてみる。
それだけで胸がドクドクと嫌な音を立てていた。
『んー…あぁ、まぁそんなとこだな』
「そっか…大変だね」
「んー…」と言う浅井の口癖に気付きながらも、みのりがいつもと変わらない様子で返事をする。
『じゃあ明日迎えに行くから』
いつもより穏やかで優しい声が余計に不安を煽る。
「うん…」
浅井さんが「んー…」と言う時は…
何かを考えてる時。
何かを…
あたしに黙っている時―――…
.



