「え…」
急に言われた予想もしていなかった一言に、浅井が驚いた表情を浮かべる。
すると、春子が言葉を付け足した。
「あ、あたし、去年の夏にこっちに来たんだけど、悠太を通して沙紀ちゃんと知り合ってね、色々相談に乗ったりしてたの。
その時は、沙紀ちゃんの名字、『浅井』だったから…」
去年の夏は、別居状態にはあったが、確かに届けの上では夫婦だった。
沙紀がその頃から崇に色々と相談していた事から、崇の職場を通して沙紀と春子が知り合った事は納得ができた。
答えにくい質問だったが…
変えられない事実に浅井が頷く。
「…はい。そうです」
春子は「そう…」と、少し落ちたトーンで呟いた後、視線を浅井に向けた。
「みぃちゃんは知ってるの?」
「みのりは全部知ってますよ」
少しだけ眉間にシワを寄せて浅井が悲しげに微笑むと、春子が少し間を開けてから口を開いた。
「お父さんが気難しいって聞いたんだけど…
沙紀ちゃん、何度も会いに行ったのに会ってもらえなかったって…」
「情けないんですが、親父とはまだ和解できてなくて…
でも…」
「みぃちゃんは…」
遮られた言葉に、浅井が春子を見つめた。
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