あの涙の理由が、本当にみのりの言った通りだったのか、

それとも、悠太との事が原因だったのか…


真面目で優しい性格を知っているからこそ、悠太を断ったみのりを思うと苦しくて…

みのりの抱いていた感情を想像すると胸が軋むばかりで、浅井が持っていたタバコをシルバーの灰皿に押し付けた。


「みのりちゃん…心配させたくないからって遼にぃには言えないんじゃないかと思ってさ…」


気を使ったように続けた悟に、浅井がソファの背もたれに体を預ける。


「みのりちゃんも結構1人で悩むタイプだし…

遼にぃに言っておいた方がいいかと思って…」


「…ありがとな」


口元だけ緩ませた浅井がポツリと言うと、悟が安心したようにカレーを食べ始めた。


悟の言うとおり、みのりはきっと自分には言ってこないだろうと思った。


心配させたくなくて…

言いにくくて。


それはみのりの性格の問題だとか、浅井の性格の問題とかだけじゃなくて。


相手を思うからこそ言えない事が、存在する。


どっちが悪い訳でもなくて、それは相手を気遣えば当たり前の事。


それに疑問を抱くなんて愚問で、傷付く事も責める必要もない。


だけど…

自分を気遣って何も言えないみのりの気持ちを思うと…

優しいみのりの気持ちを思うと…

やるせない気持ちになった。


きっと悩んでるに違いないから。



「みのりちゃん、料理上手くなったね」


「オムライスとカレーだけな(笑)」


カレーとタバコの匂いが混ざる空気を、浅井が窓を開けて外に逃がした。


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