「今日さ、姉ちゃんのお使いで、みのりちゃんに病院に来てもらったんだけどさ」


大盛によそったカレーを口に運びながら話す悟を、浅井がタバコを吸いながら見る。


湯気だか煙だか、どちらのものともとれる白い気体がしばらく空中で停滞しては消えていく。


「姉ちゃんが入院してるのって小田切っちのおばさんと同じ病院なんだけどさ。

今日みのりちゃんがいる時色々あって、小田切っちも病院に来たんだ」


「辛いな〜…」とコップに入った水を飲みながら悟が続ける。


「小田切っち、ずっと1人でおばさん支えててさ…結構大変みたいなんだよな。

小田切っちって結構溜め込むタイプだし…」


「…何が言いたいんだよ」


主旨の掴めない悟の話に、浅井が煙を吐きながら言葉を促す。


上っていった煙が、行き場をなくして天井の辺りで留まっては空気に溶ける。


「たまたま見ちゃったんだけど…小田切っち、かなり疲れてるみたいで…みのりちゃんに『助けて』って言ってた」


眉をひそめた浅井に、悟が慌てて言葉を付け足す。


「あ、みのりちゃんは断ってたよ。

つらそうだったけど…ちゃんと断ってた」


ふと浅井の脳裏に、先ほどのみのりの涙が浮かぶ。


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