「あぁ、そうだ」


あまりの心地よさに眠りの世界に引き込まれそうだったみのりの耳に、突然浅井の声が届いた。


髪を撫でていた手を止めた浅井が、みのりを抱き締めていた腕を緩める。


「見舞い行ってこいよ。

小田切んとこの母親の見舞い」


うとうとしていたみのりが、浅井の言葉にがばっと顔を上げて浅井を見た。


「えっ…なんで?!」


「なんでって…みのりが行きたいって言ったんだろ」


「悠太のお母さんだよ?!」


「わかってるよ。

…うるせぇな(笑)」


大げさだとでも言いたいような浅井に、みのりが表情を歪める。


絶対反対されると思っていたから、まさかのGoサインに戸惑いを隠せなかった。


『あの浅井さんが…?』とでも聞こえてきそうなみのりの顔に、浅井が苦笑いを浮かべた。



「別に反対する理由もないし。

小田切とみのりが会ったりするのはやっぱり少し気に入らねぇけど…

それはオレの問題だし。

みのりは気にせず行ってこいよ。

世話になった人なんだろ?」



浅井の言葉に心の中の葛藤が見えるようで、みのりがクスクスと笑った。


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