「浅井さん…」
振り向いた先で1人の教習生が心細そうな視線を向けて立っていた。
ようやく出てきた太陽が、塚越の黒い髪を明るく照らす。
「…なに?」
言い方が冷たくなったのを自分でも感じたが、そこは仕方がないと諦めた。
別に今まで塚越が自分にしてきた事を怒ってはいない。
だけど…
みのりにまで敵意を向けて傷付けた事に関しては許せなかったから。
みのりがそれを隠しながら、毎日塚越との教習の事を考えて不安になっていた事を思うと、また一つ胸が痛んだ。
今思えば、
『許されないよね…』
そう泣いた時のきっかけは塚越からの電話だったのかもしれない。
人の道から外れた事をした自分達が責められるのが当たり前なのは分かっていても、みのりが傷付くのは見たくない。
そこまで分かっていて、そんな思いを抱えてるのがおかしい事も分かってる。
…だけど、オレが守んなきゃ誰もみのりを庇えない。
同じ気持ちを抱えるオレだけがみのりを救えるのに…
『オレだってしてたじゃん』
まるで、みのりに罪を押し付けるような言い方…
痛みっぱなしの胸が、ジクジクと熟みだす。
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