「分かりませんよ。
元からそうゆう人だったんじゃないですか?
だって浅井さんにファミレスで男の人と会ったの言わなかったのは、何かやましい事があったからじゃないですか?
きっとあの男の人と…浅井さんっ」
塚越の言葉の途中で車を降りた浅井を、塚越が追い掛ける。
「浅井さんっ」
教習車の間をぬって歩く浅井が、塚越の呼びかけに体半分だけ振り向いた。
「…おまえいい加減にしろよ。
人のプライベートにずかずか入ってきやがって…
もしおまえの話が本当でもおまえには関係ない。
オレとみのりの問題だ。
…もう指名すんな」
初めて見せる『教官』ではない顔に、塚越が言葉を呑んだ。
少し怯えたようにも見える塚越に背中を向けて建物の中へと入る。
その足で喫煙室に入り、気を落ち着かせようとタバコを吸おうとしたのに、ジッポの火のつきが悪く…
そんな事に余計に荒だった気持ちに、表情をしかめる。
手の中のみのりからもらったジッポを見つめて…
ぎゅっと握り締めた。
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