塚越の運転する教習車はちょうど、元の停車場所に停車したところだった。
教習を終えた車からぞくぞくと教習生や教官が降りていく中、20番車だけがやけに静かだった。
「…あたしと佐倉先輩、条件はほとんど一緒じゃないですかっ
南商で銀行受けて…性格だって…
他の教官に、似てるって言われた事だってありますっ」
塚越の声が車内に響く。
考えてみれば、教習生にこんなに粘られたのは初めてだった。
どうしたもんかと冷静に考えながら浅井が返事をしようとした時…
塚越が先に口を開いた。
「あたし…浅井さんに言っておきたかった事があるんです。
2週間前の木曜日…
佐倉先輩何してたか知ってますか?」
塚越の意味深な言い方に、浅井が眉をひそめて塚越を見た。
もうみんな建物の中に入ったため、周りには誰もいなく、恐ろしく静かだった。
「あたし、その日友達と南商の近くのファミレスで待ち合わせしてて…
19時くらいだったと思いますけど、駐車場で佐倉先輩が男の人といるの見ました」
.



