「教習生って…佐倉先輩だってそうだったんじゃないですか?」
疲れを感じていたせいか、うっかり裏を返されるような返し方をしてしまい、気付いた時にはもう遅かった。
それに気付いた塚越が容赦ない、遠慮も何もない言葉をぶつけてきた。
「そうだったっけな(笑)」
軽く流してみても車内の雰囲気は変わらなくて…
だけど、もう終わる教習時間に、別に車内の雰囲気がどうかなんてどうでもよく感じていた。
もうすぐ8月も下旬。
塚越の卒業も近い。
そんな重い雰囲気の中で塚越が口を開いた。
「佐倉先輩はよくてあたしはダメなんですか?」
なんとも答えにくい質問に、教官として答える事は出来なくて…
諦めたように、浅井がため息をもらしてから返事を返した。
教官としてではなく、男としての返事…
「あぁ…
悪いけど、みのりは特別だから。
塚越もオレなんかにこだわってないで他…」
「なんでですか?!」
浅井の言葉を、塚越が遮った。
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