気付かせたくなかった。
知ってほしくなかった。
塚越が自分達の元の関係を知っている事を。
「あ…浅……」
苦しそうなみのりの声に気付き、浅井がやっとみのりを解放した。
「みのりは何も考えなくていいから…
塚越だって一時的なもんだって(笑)
…何も心配する必要ないから」
頬を撫でながら優しく微笑む浅井に、みのりが何も言わずに頷いた。
「あ、やべ…
結構目立ってた」
「えっ…やっ!
浅井さんのせいだよぉ…」
浅井の言葉にみのりが車の外に目を向けると、数人の教習生がチラチラと視線を送っていて…
みのりが赤くなった顔を両手で隠した。
「とりあえず車出すか(笑)」
そんなみのりに笑いながら浅井がエンジンをかけてハンドルをきった。
ちょうど送迎バスがきたところで、バスに乗り込む塚越の姿が運転する横目に入ってきて…
そのまま目を逸らした。
守りたいのはみのりなのに…
塚越を傷つけないようにしなくちゃいけない事に不条理を感じながら、隣で口を尖らせるみのりに笑いかけた。
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