「…ぁ…んんっ…」


深いキスに、思わず声をもらしたみのりに少しだけ笑みをこぼして翻弄し続ける。




塚越に冷たい態度をしなくなった理由に嘘はなかった。


みのりと塚越の関係を自分のせいで悪くしたくなかった。


『憧れちゃいます』

そう言っていた塚越の言葉は本当だと思ったから。


塚越が南丘銀行に就職すれば、2人の関係はこれからも続いて行く。


もしも職場で塚越が腹いせにみのりの事を悪く話したりしたら…

みのりは会社での立場も悪くなってしまうかもしれない。


必要以上の責任感を持ってあんなに頑張ってるのに、そんな事で立場を悪くしたらみのりが可哀想で…

そんな事考えたくなかった。


助けたくても、会社の中で起こった事にはどうやったって自分は介入できないから、余計に過敏になっていた。



それに…



『佐倉先輩だって奥さんから浅井さん奪ったんじゃないですか』


塚越のその言葉に込められた想いが、みのりを傷付けそうで怖くて…


自分が冷たく接したら、その悔しさの矛先がみのりに向かいそうで怖くて…


だから、冷たくできない。




やっかいだな…




少しだけ目を開けると、きつく閉じた瞳の先でまつげを震わせるみのりが映って…

浅井が愛しそうにみのりの髪をなで上げた。


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