「ひどいっ

あたしだっていざとなったら頑張るもんっ」


「いや、無理だな(笑)

オレが守ってやるよ。


…オレ、おまえさえ助かれば他はどうでもいいし」


平然と言った浅井をみのりが少し見つめて…

マグカップを持つ反対の手を浅井の腕に絡めた。


「浅井さんも一緒に助からなきゃやだ。

共犯者は2人じゃなきゃ意味ないよ…」


浅井の肩に頭を乗せたみのりに浅井が優しく微笑む。


「わかったよ。

注文の多い犯人だな(笑)」


コーヒーの香ばしい香りが、リビングに広がる。


ふと浅井が近付いてきた気配にみのりが顔を上げて…

目をつぶった。


苦いはずのコーヒーの味に、浅井のキスが甘さを加える。


短いキスをして唇を一度離した浅井を、みのりが見つめた。


「浅井さん…」


「…ん?」


「敵は自分…?」


ふざけていたはずのみのりの口から出た意味を持った言葉に…

浅井が悲しそうに笑う。


「海に落ちても山で遭難しても、何があってもオレが助けてやるから…

…みのりのトランクには非常食も入ってる事だしな(笑)」


浅井のジョークにみのりがふっと笑みをこぼす。


1年前に交わした会話がみのりの表情を柔らかくした。


そんなみのりを見つめて…

浅井がおでこをくっつけてみのりの頬を両手で包んだ。


「…もう考えんな」


「ん…」



再び重なった唇は、なかなか離すことが出来なかった。


次第に熱のこもるキスに、みのりが苦しそうに表情を歪めた。



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