「いい事教えてあげる」

二楷堂がそうささやいたのは、十分にキスをした後。
二楷堂とのキスで、身体に力が入ったんだか抜けたんだか分からない状態の私は、抱き締められたままそれを聞いてた。

「俺とキスすると、足りてなかったモノが満たされるんだ。
亜姫は、もう身を持って分かってるだろうけどね」
「それって……っ」
「だから、他の男とキスしようなんて思わないように。
俺以外とのキスじゃ、亜姫は満たされないって覚えておいて。
……色んな意味でね」

「まぁ、他の男になんか触らせないけど。絶対に」そう言った二楷堂が、身体を離して私を見下ろす。
唇に触れてから、軽く力を入れて割り入ってくる、二楷堂の親指。


その指先が、私の牙に触れていた――。