「ハンター……?」

信じられない思いで聞き返すと、二楷堂が続ける。

「ああ。協会に殺されそうになったって言っただろ?
15年前俺は、両親の墓参りに行くってそそのかされて知らない山奥まで連れて行かれてナイフで切りつけられた。
そしてそのまま放置されたんだ」

そうですよね、会長、と二楷堂が視線を移した先を追うと、会長が目を伏せて眉をしかめていた。
その顔から事実なんだと判断する。

「俺がいなくなれば王位は第二継承者である紅月に移る。
紅月は協会の息がかかってるっていうのは随分前から噂になっていたし、紅月が王位を継承すれば協会側が色々やりやすいっていう理由からだろう。
成長して色々知るうちにそれが分かって、ヴァンパイア界に嫌気が差したんだ」
「ちょっと待って。山奥に放置されたんでしょ? どうやって助かったの?
まだ小さかったし、傷の治癒能力だって低かったでしょ?」
「ああ。傷を抱えたまま丸一日歩き続けて、ようやくひとつの街に出たんだ。
来た事も見た事もない知らない街だった。
そこで知り合った男が助けてくれて……それがハンターだった。
聞いた時には驚いたよ。もっとも向こうも俺の正体に気づいて驚いてたけどね」