「あの男の事、気に入ってるの?
珍しいじゃない。今までは恋人どころか友達すら作ってこなかったのに。
心境の変化?」
「心境なんか変わってない。
あんなのはただの男よけ。
大学に入ってから周りがうるさくなったから、近くに置いてるだけ」

ベッドに座りながら言う。
美音は壁に寄りかかりながら私を見ていた。

「ふーん。それにしては仲よさげに見えたんだけど」
「また覗き見したの?
そういうの、不愉快だからやめて」

なるべくいつも通りに答えて、美音に不信感を抱かせないようにする。

本当だったら、美音のこういう疑いを避けるためにも、二楷堂とはあまり一緒にいない方がいい。
でも、二楷堂にそう言っても、全然聞いてくれなくて。

『最悪、俺がなんとかするからいいよ』なんて言われちゃえば、どうする事もできない。